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福祉関連の本の紹介と、ちょっとした福祉にかんする話題を提供するコーナーです

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No71  安冨 歩 『複雑さを生きる ――やわらかな制御――』 岩波書店 2006年

キーワード:複雑系、コミュニケーション、ハラスメント


一見、福祉とは関係なさそうなタイトルである。でも、個人、家族、地域など、複雑な「問題」状況を扱うソーシャルワークを再考する際のヒントが得られるかもしれない。

なにしろ、「はじめに」で、本書の目的は、複雑系科学に関する知識を踏まえたうえで、「複雑で多様な世界とかかわるための具体的方策の提案」をすること、「現代の諸問題に対処するための科学的思考法」を提供すること、と書いてあり、かつ、

「本書の議論から導出される生活上の教訓をまとめ」として、ソーシャルワークが寄って立つべき人間観が、次のように書かれているのだから。

われわれ人間にひとりひとりの心身には、信じがたいくらいに高い計算能力がそなわっており、その力を活用しなければ、複雑な世界を生きることはできない。その創造的な力の作動を恐れ、外的な規範にとらわれ、直接的な目標達成のためにがんばることは、事態を悪化させるだけである。ものごとに取り組む場合には、その置かれた状況を視野にいれ、学習能力を活性化し、間接的で動的な働きかけを行わねばならない。そのために必要な暗黙の力があなたには必ずそなわっている。


複雑系科学の知識を理解できたかどうかは心もとないが、2章「関係のダイナミクス」、3章「やわらかな制御」5章「やわらかな市場」では、若干のヒントを得ることができたように思う。

2章「関係のダイナミクス」では、コミュニケーション過程で、相手が自分と同じ世界をなんらかの形で共有しているはずだという寛容にもとづく思い込みは、外的規範の基礎であるとともに、「ハラスメント」と呼ぶような支配・被支配関係を生み出す危険性を常にはらんでいる、と指摘する。

著者による、コミュニケーションがハラスメントとなる機構の記述は、DVの描写そのもの、である。著者に従えば、コミュニケーションはハラスメントの契機を常にもっていることを認識したうえで、利用者の周囲とのコミュニケーションの状況を理解すること、ソーシャルワーカーの利用者とのコミュニケーションがハラスメントに陥らないよう、また、利用者からハラスメントを受けないよう、コミュニケーションを相互の学習過程;学びあいの過程とすることが重要なのだ。

5章「やわらかな市場」では、市場を価格と需要・供給で構成される「マーケット」と考えるのは不適切だと断言する。市上は、人と人が関係構築と情報収集にいそしみ、やりとりが繰り広げられる「バザール」に近く、その傾向はインターネット化とボーダレス化によって拡大している。企業の目的は、金儲けではなく、顧客とのコミュニケーションを活性化させること、これこそが世界経済におけるサバイバルの方法なのである。

同じように、個人主義化による共同体や家族の「紐帯」の弱化、崩壊が問題なのではなく、人々が相互に学習過程を開いた形でコミュニケーションできるかどうか、である。ハラスメントを押さえ込む形での関係づくり、それを地域のなかで、家族のなかでどう実践できるか、制度の補強ではなく、コミュニティワーク、ファミリイソーシャルワークの方法・技術の問題だ。

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