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福祉関連の本の紹介と、ちょっとした福祉にかんする話題を提供するコーナーです

No.68 浦賀べてるの家 『べてるの家の「当事者研究」』医学書院、
2005年

キーワード:当事者、当事者研究、統合失調症

以前出版された『べてるの家の「非」援助論:そのままでいいと思えるための25章』を知ったとき、「『非』援助論」、という言葉に刺激を受けたが、本書の「当事者研究」もまた魅力的だ。

ソーシャルワーカーの向谷地さんの文章によると、「当事者研究」は、「問う」ことを通して、「自分の苦労の主人公になる」という体験であって、「幻覚や妄想などのさまざまな不快な症状に隷属し翻弄されていた状況に、自分という人間の生きる足場を築き、生きる主体性を取り戻す作業」ということである。

当事者による当事者のための当事者についての研究。

本書に文章を寄せた、べてるのメンバーの多くが、向谷地さんに「当事者研究」をしてみないか?と言われて、なんだか面白そう、と思ったと書いている。

楽しんでやれる「主体性を取り戻す作業」の新しい方法の発見。ほぼ30年に渡るべてるの歴史のなかで、熟成されてきたものなのだろうが、これはすごいことではないか。

向谷地さんによれば、「当事者研究」にかんする「共通のエッセンス」は、「<問題>と人とを切り離す」、「自己病名をつける」、「苦労のパターン・プロセス・構造の解明」、「自分の助け方や守り方の具体的方法を考え、場面をつくって練習」、「結果の検証」である。

これを自分自身で行うのだが、仲間のグループで、そして専門職も共に行う。だから、この作業は、「人とのつながりの回復と表裏一体のプロセス」なのである。

このエッセンスは、ナラテイブアプローチ、解決志向アプローチ、SST(ソーシャルスキルトレーニング)のエッセンスでもある

いろいろな「当事者研究」が、「サバイバル系」「探求系」「つながり系」「爆発系」と分類されて報告されているが、研究の質と報告の質について、もっとも面白かったのは、渡辺瑞穂さんの「摂食障害の研究:いかにそのスキルを手に入れたか」だった。

虐待や機能不全家族に育った子どもたちが、渡辺さんを初めとする「サバイバル系」の当事者のように、「当事者研究」をする機会と仲間といい支援者に恵まれることを、改めて強く願う。
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