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福祉関連の本の紹介と、ちょっとした福祉にかんする話題を提供するコーナーです

No34 菅原哲男 『家族の再生――ファミリィソーシャルワーカーの仕事――』 言叢社 2004年

キーワード:家族、児童養護施設、児童虐待、家族統合、ファミリィソーシャルワーカー


2004年度から全国550箇所強の児童養護施設や乳児院、母子生活支援施設等の児童福祉施設にファミリィソーシャルワーカー(家庭支援専門相談員)が配置されることになった。「家族関係の調整」のためのファミリィソーシャルワーカー配置費用はわずか年間200万円、児童の「自立支援」のための家族調整費200万円と合わせても400万円で、ベテランの専門職を雇用できるような額ではない。

とはいえ、「家族関係の調整」というソーシャルワークの役割、つまり、サービスや資源の調整というケアマネジメントではなく、人間関係、それも親子・夫婦という親密な関係に介入し、積極的な調整を図るという役割の必要性と重要性を国が公式に認めたこと、そして、これに費用を出すことになった点については、注目していい。

なにしろ、わが国でソーシャルワークという職業を専門職として国が認め社会福祉士という専門資格をつくったのが1987年、民間組織に委託した在宅介護支援センターに費用をつけてソーシャルワーカーの配置を求めたのが1989年である。医療機関におけるソーシャルワーカーを除けば、ソーシャルワークの仕事ができる職場、職域はそれまで極めて限られていたのだ。

だが、ファミリィソーシャルワーカー配置の背景には児童虐待事例の激増がある。単純に喜ぶわけにはいかない。

「家族関係の調整」は、ソーシャルワークのテキストに用語としては出てくるものの、それがどういうものか、その方法やスキルはほとんど整理されていない。本書は、従来より「ファミリイソーシャルワーク」を実践してきた「光の子どもの家」(児童養護施設)の施設長が、「総合的な家族調整」とはいかに困難なことなのか、しかし、それにもめげずに携わろうとする人々に、手助けになるような認識や方法を提示したいと考えて執筆したものである。

「子どもが当面する養育の困難さと、親が当面する生きることの困難さのなかで、子どもが親に受け止められ家庭に復帰できる状況をつくりだすことはいっそう困難なことである。固有な分離と再統合の出会いの物語を長い時間をかけて育んでいくことは、児童養護施設で働く人々によってしか果たしえない本質的な課題」こう言い切って、さまざまな事例をもとに、ファミリイソーシャルワークの原則と方法・スキルを提示してくれている。

きわめて困難な状況においても粘り強いワークを行う原点は、「家族の原型」とは何かを問い続ける姿勢であり、児童養護施設として子どもたちに「家族の原型」を与えようとする熱意である。

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