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福祉関連の本の紹介と、ちょっとした福祉にかんする話題を提供するコーナーです

No23 上野千鶴子 『家族を容れるハコ 家族を超えるハコ』 平凡社 2002年

キーワード:家族、住宅、住空間、コミュニティ
      
社宅やアパート、マンション、分譲住宅というように、決められた空間に合わせて住むことを強いられてきた者として、部屋や家というのは、もともと「使い勝手が悪いもの」という思い込みとあきらめがあった。

だから、住空間が指し示す「規範」としての機能的ゾーニングと、変化しつつある家族の住空間の使い方とのあいだにはギャップがあるらしい、という問題関心には「ああそういう関心のもち方があるのか」とちょっと驚いた。家族の変化を追いかけて、こうした問題関心に行き着いたとのことだが、1980年代からの関心というから、さすがである。

福祉施設の居住空間について、利用者にとっての快適さを追求する視点から議論がなされるようになったのは、ユニットケアとかグループホームとか、つい最近のことだ。家族のための「ハコ」同様に、「容れられる者」にとっての「ハコ」の意味を、建築家だけでなく、援助職も利用者ももっと関心をもつべきだ。

さて、いろいろ面白い指摘はあったのだが、特に関心をもった「選択性のコミュニティ」と「開いた居住空間」という2点を取り上げよう。

まず1点目。子どもや高齢者などの依存的な他者をかかえたとき、人々は家族を必要とし、育児、介護の社会化という機能を組み込んだコモンの空間を必要とする。こうしたコモンの空間は、居住の近接が強要するような地縁によるコミュニティではなく、選択縁による選択性のあるコミュニティである。

確かに、これはよくわかる。隣近所の人にプライバシーを知られたくないのが一般的な心情だし、ちょっとした手助けを必要とする高齢者のなかにも、地域の民生委員や隣人の助けはいやと言う人も少なくない。だから関心や理念を共有する人々と、元気なうちからネットワークを作っておこう、理念を共有する人々に連絡をとって支援を受けよう、ということになるのだろう。だが、それはしんどい話だな、と思う。選択してネットワークを作ることのできる「強い」人ばかりではないのだから。

介護保険でサービスの使い勝手は格段によくなったけれども、家族なしで、介護保険や福祉のサービスだけで、要介護の高齢者が安心して地域で暮らせるわけではない。「弱い」人には、選択的コミュニティづくりを援助職が支援するにしても、空間(近接)が媒介するコミュニティも、「安心」と「安全」な暮らしの確保のために必要だと思う。理念や関心が媒介する選択的コミュニティとともに、空間が媒介する新しいコミュニティづくりを急ぐ必要がある。

2点目の「開いた居住空間」というのは、介護保険が介護の社会化を推し進め、家族を開いたのだから、建築家は、それに見合って開いた居住空間を建築してほしい、ということである。
プライバシーに敏感な団塊世代が満足できる開いた家は、今後、どのように設計されるのだろうか?

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