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No16 宮地尚子編 『トラウマとジェンダー: 臨床からの声』 金剛出版 2004年

キーワード:トラウマ、ジェンダー、PTSD

     トラウマとジェンダーという、きわめて今日的なキーワードをふたつ用いて、性暴力や中絶、非行・犯罪、DV、児童虐待などの臨床の現場から「見えなかったもの」「語られてこなかったこと」を明らかにし、既存の理論の再考を試みた本である。

      愛着理論やボンデイング理論を臨床現場から再考した、小児科医による「心的トラウマと子どもの臨床――母性というジェンダーの文脈――」(5章)など、興味深い考察がある。
宮地さんの1章「総論――トラウマとジェンダーはいかに結びついているか」はトラウマとジェンダーの関連をとてもわかりやすく解説しているが、印象に残ったのは、以下の文章。
      精神療法とは「象徴体系のこりをほぐす」こと。象徴体系とは、頭のなかにある認知や志向、行動のもとになっている心的図式、さまざまな価値観や思い込みによってつくられた網の目のことである。この網の目をほぐすこと。「べき思考」からの脱出、完全主義や白黒の二元的思考の回避、思い込みの見直し、と言い換えることもできる。
      宮地さんは、「なんのことはないリフレーミングである」とも言っている。クライエントも関係者も、象徴体系にとらわれていて、網の目に柔軟性やゆとりがない。これが正しい、こうすべきだ、などと思い込んでピンとはりつめた網の目に、少しゆるみがでるよう、異なる視点からの考察や評価ができるよう、「自己リフレーミング能力を高めていくこと」、その結果、「人間関係のこりがほぐれること」が、治療の最終的目標なのだ。「人間関係のこりをほぐす」、とてもわかりいい表現では?

      ジェンダーが作り出す象徴体系、トラウマが強化する象徴体系を解体してしまうのではなく、すこし揺さぶってこりをほぐしていくこと、リフレーミング(再構成)していくこと。宮地さんは、言葉によるカウンセリングだけでなく、身体を使ったワークや儀式も有効と言っている。こうしたことは、クライエントだけでなく、経験の蓄積や自信によって思い込みの体系を作りやすい実践家にも必要だ。
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