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No98  若島孔文・生田倫子編著 『ナラティブ・セラピーの登竜門』 アルテ 2008年

キーワード:ナラティブ、物語、ブリーフセラピー


昨年(2008年)の秋以降、時代は「100年に1度の経済不況」期に入ったとのこと。ブームであった「癒し」や「ケア(思いやり)」も、今やそれどころの話ではなく、制度改善・創設を急げ、という感がある。

だが、足元が一気に瓦解してしまうおそれのある時代だからこそ、また、家族や周囲から関心をもたれないままこの世を「departure」していくおそれのある時代だからこそ、「語り」と「傾聴」が、つまり、「癒し」と「ケア」の手法がこれまで以上に求められているとも言える。

そこで、ソーシャルワークの世界でもナラティブ・アプローチへの関心が続くことになる。しかし、このナラティブ・アプローチ、社会構成主義という認識論に立つことと、「外在化」という視点/技法(?)を採用することはわかっても、どのようなアプローチなのかよくわからない。

「not knowing(無知の姿勢)」という用語にひっぱられ、「専門家は専門性を発揮しないで会話の内容や方向性をリードせず、クライエントに自由に語ってもらう」という、ナラティブ・アプローチのイメージがソーシャルワーク界に定着しているからだろう。ジョン・マクレオッド『物語としての心理療法:ナラティブ・セラピィの魅力』(誠信書房)をちょっと読んでも、わかりそうにない。

本書は、まえがきで、「ナラティブ・セラピィの『実態のなさ』、『所在のなさ』は、ナラティブ・セラピィのマスターセラピストたちが、当時の最新の認識論を取り入れたことを強調し、実際の面接について多くを語ってこなかった」ことにあると言明し、実際を語ると言っている。

最初に、編者のひとりが、「ナラティブ・セラピィによるクライエントの物語のふくらみも、まさにカウンセラーの力量によると思える。力量がないと、『どこにいくのかわからないセラピィ』になる」という言い方をしている。つまり、セラピィである以上、専門家は専門性を発揮する。では、どのように?

息子の不登校で相談に来た母親の例を使った説明によると、以下のようなことがナラティブ・セラピィの手順ということになる。

①クライエントが自分や家族に起こっている問題(不登校)について語るのを聴く

②問題がその人の生活や人生、人間関係にどんな影響(不登校問題がもたらす夫婦関係や自分の人生への影響等)を与えているのかを聴く ⇒ クライエントにとっての個別化・特殊化されたストーリー;一般的な不登校という記述からの切り離し 

③その影響を受けなかったときを探る = ユニークな結果の探索; 語られなかったストーリー/ストーリーになることがなかった小さな出来事を探しだす = ②を経ているので、問題自体の変化にとらわれる必要がない( 問題を解決できなかったというドミナント・ストーリーの構築に手を貸さなくてすむ)

④ユニークな結果が生活や人生にもたらす影響を探る = 新たなストーリーの生成 ⇒ 問題(①ではなく①が生み出した②の影響という問題)の存続に対する影響を探っていくことへの動機づけ

⑤ユニークな結果を拡張する; 問題の影響と問題に対する影響の割合を質問するという方法も採用 ⇒ 問題に支配されていた自分から問題に対して影響をもつことができる自分というあらたなストーリー。
影響をもつことができるようになる方法として擬人化があるが、メタファを使わなくてもよい。対処の方法をセラピストと一緒に探していく。
セラピストはクライエントの語る新たなストーリーの聴衆に。さらに、多くの人が聴衆になるのがよい。このように考えれば、問題の外在化は、ストーリーに関わる聴衆の座席が作られると考えることができる。

上記の「ユニークな結果」は、ソリューションフォーカスト・アプローチの「例外」と同じだ。ソリューションフォーカスト・アプローチほどには質問技法を明確化していないのは、「クライエントの解決方法を知っているのはクライエント」という基本を押さえて流れを進めていけば、あとは自由自在にやればよいということか?

本書6章「物語としての感情」では、ソリューションフォーカスト・アプローチでは正面から取り上げない「感情」を扱うという興味深い論を展開している。

アメリカと違って、日本のソーシャルワーカーがナラティブ・セラピィを直接やることは、当分のあいだほとんどないだろう。だが、ただ「語り」を「傾聴」するだけではなく、解決の方向性を探るためにクライエントとともになにをすればよいのか、それを知っておくことは、実践に役に立つはずだ。

ただ、ソーシャルワーカーは、(問題がありすぎて/問題を認めたくなくて/etc.)、「問題」が何かわからない人々/「問題」を「問題」として自覚していない人々/「困り感」のない人々/etc. に多く直面する。こうした人々を語りの場に導く方法・スキル、ソーシャルワークはそれらを整理して提示しなければならない。すでに多くの方法・スキルが使われているのだから。

ここまで書いた後、ナラティブ・アプローチをソーシャルワーク実践に活用した荒井浩道さんの「繋がっていかない利用者への支援――ソーシャルワークにおけるナラティブ・アプローチの可能性――」(崎山治男他編『<支援>の社会学』青弓社)を発見しました!
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