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福祉関連の本の紹介と、ちょっとした福祉にかんする話題を提供するコーナーです

番外No10  認知症と高齢者虐待

平成18年4月から高齢者虐待防止法が施行され、マスメデイアも「介護殺人」や虐待事例を多く取り上げるようになった。

高齢者虐待に関する種々の実態調査は、虐待を受ける高齢者には認知症の人が多いことを示している。一般的に考えると、認知症高齢者の「行動の混乱」や意思疎通の困難さが、介護者のストレスを高めるから、虐待行為が生じるといえそうだ。

しかし、アメリカの認知症高齢者と介護者をペアにして調べた調査によると、高齢者の15%が介護者に、介護者の5.4%が高齢者に、3.8%が互いに暴力を振るっていた。つまり、認知症高齢者の攻撃的行為が介護者の攻撃行為を誘発する傾向もあるということだ。

他の調査によると、認知症高齢者を介護する家族の19.5%が、自分が暴力的になることを恐れているし、実際に5.9%が暴力をふるったと述べていた。暴力的になることを恐れている介護者は、破壊的行動をとる高齢者をケアする傾向が、そうでない介護者よりも強かった。

アルツハイマーに伴う攻撃行動をどうマネージするかということについて、家族介護者や介護職が理解していないと、彼らによる高齢者への虐待行動のおそれが高くなってしまう、という仮説が出されている。

こうした研究が、わが国でどれほどなされているのか知らない。認知症の夫が介護する妻に暴力を振るう、という話しを聞くことがあっても、認知症高齢者による暴力は、我が国ではあまり問題視されていないのでは?

高齢の夫が妻を殴るような事例では、認知症によるものよりもDVとして理解されることが多いからだろうか? あからさまな暴力というよりも、他の攻撃行動や「問題行動」として表現されることが多く、そのため、「パーソンドケア」とか「共感」によるケアといった、ひたすらケアする側の問題として把握する傾向があるのだろうか?それとも、、、

井口高志さんの『認知症家族介護を生きる;新しい認知症ケア時代の臨床社会学』(東信堂2007年)は、認知症高齢者と家族介護者の相互作用等を論じて興味深いが、その家族会についての話のなかにも、高齢者からの暴力という話は出ていなかった。


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