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No87 小泉潤二・志水宏吉編 『実践的研究のすすめ ――人間科学のリアリティ――』
有斐閣、2007年

キーワード:実践的研究、現場、研究者の倫理、研究法


社会学も社会人類学も実践的研究を行うが、社会福祉の研究はかなりの部分が実践的研究と言っていい。政策科学の色彩が濃い学問分野だからだ。

実践の現場に研究者が関与して行う研究、現場の実践者と研究者が協働して行う研究、現場の実践者が研究者として行う研究、社会福祉では、さまざまなタイプの実践的研究がありうる。

どのようなタイプの研究であっても、現場と研究、実践と理論、の関係について基本的な考え方を押さえておく必要がある。

本書、特にⅠ部の「研究のプロセス」に掲載されている各章は、ああそうか、とか、そうだそうだ、と納得できるフレーズ満載で、有益だ。

それをいくつか拾っておこう。
・ データの信用性;データはおもしろいだけでは使えない。信用できる答えが導き出せないものは実践的な研究においては意味がない。

・ 調査のデザイン;もっとも望ましいのは、結果の公表から考え、それが可能なデータ分析の形、それに即したデータ収集法、対象選定、問いをたてるという方法。しかし、それはしばしば困難であるから、現場からどのようなデータが得られるかを考え、データを生かすデザインを考えること、それが実践的研究につながる。

・ 実践的研究にとっての理論の意味;実践を行うには、理論という水準で、1つの視点に立ってみることから始まる。現実は1つの視点で切り取れず、別の視点が必要であるからこそ、自己の視点とその相対化が重要。
自分の感性を疑ってみること、別の視線をとってみること、いまの立場ではなく、状況総体を俯瞰してみること。理論が意味をもつのは、こうした複数の視線を確保するため。

・ わたしたちは、研究コミュニティへの貢献とともに、当事者現場への貢献というものを考慮しながら、学問的業績を産出していかなければならない。社会に「役に立つ」ということが、現場研究には求められる。

・ 現場にかかわる研究者の実践とは、研究者コミュニティと現場という2つの世界を行き来するなかで、当事者たちの実践に関する新しい知を生み出すこと
そのときに目指されるべきは、研究者コミュニティのみならず、現場にもなんらかの貢献をもたらすような種類の知を立ち上げること =臨床の知、フィールドワークの知

・ 実践的研究とは、当事者の実践と研究するという私たちの実践が共振したときに生じるもの、当事者と研究者による共同メッセージという色彩をもつもの

・ 研究者はあくまでも理論構築にこだわらないといけない。実践としての研究の究極の目標は、あらたな理論知の創造

・ ローカルな文脈を超え、ある広がりをもった状況下で普遍的に通用する理論的知識、という意味でのトランス・ローカルな知の創造こそ、研究者としての役目

 こうした研究者としての役目を果たすためにも、最初から最後まで調査対象となる現場・実践家との信頼関係の形成がなによりも重要であること、その信頼関係の形成には、きめ細かな工夫と相当の努力が必要であることを、本書は改めて気づかせてくれる。
 具体的方法については、コラムやⅡ部「研究の方法」の各章にも記載がある。

ただし、本書には、複数の調査対象者の誰と信頼関係を結ぶのか、すべての人か代表者か、個人か組織か、などについては記載がなかったように思う。しかし、誰とでも信頼関係を結ぶことはむずかしい。第一線職員かマネジャーか。第一線職員のなかでもどの人たちと?


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