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福祉関連の本の紹介と、ちょっとした福祉にかんする話題を提供するコーナーです

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No84 粟津美穂 『ディープ・ブルー ――虐待を受けた子どもたちの成長と困難の記録――』  太郎次郎社、2006

キーワード:児童虐待、PTSD、グループホーム、児童保護ソーシャルワーク


本書は、日本人の元ジャーナリストが、ソーシャルワークの大学院を卒業した後に、児童保護局でグループホーム(日本でいえば児童養護施設)ユニットでソーシャルワーカーとして働いた体験をもとに記述したものである。

アメリカの児童虐待防止活動の第一線を描いた文献は、以前にもあった。だが、本書は、5人の子どもへの支援に「格闘」してきた体験だけでなく、アメリカの近年の児童保護制度と児童虐待防止ソーシャルワークについても記述してあり、そちらも興味深い。

虐待の連鎖、DVと児童虐待、貧困と薬物依存と虐待、思春期に噴出する愛着障害の問題、性的虐待とPTSD、青少年への抗精神薬の処方と激しい副作用、、、問題の深刻さは読む者を圧倒する。

虐待対応の社会資源メニューの多さと量の乏しさ、ラップアラウンドという地域ケアプログラム、FGC(家族会議)の試み、、、試みの多様さと、根本的対応の乏しさは、「アメリカ的」か。

家庭裁判所の判断、法や手続きに従って行う支援活動が、ソーシャルワーカーの活動を支えるとともに、ときに阻害要因として働く。また、関係者との協働が不可欠であるにもかかわらず、それが必ずしも容易ではないという現実がある。

それでも、ひとりひとりの子どもの生活と将来のために、働く。「親代わり」のように。
大学院での児童保護ソーシャルワークの専門教育、職場のスーパービジョン体制、同僚間の支えあい、職場での研修、なによりも担当数の限定、さまざまな支援体制があっても、つぎつぎとやめていくのが現状とのこと。きついうえに、マスメディアから非難されはしても、評価されはしない仕事。報酬が相当高くなければ、自分がボロボロになる前にやめるのが当然といってよい仕事。

本書の筆者のように働く人たちの動因は、何なのだろう。

ニュージーランドで始まったFGCは、イギリスでもアメリカでも注目され、導入されつつある。わが国でも厚生労働省を初め、関係者が関心を寄せている。イギリスでは、ネグレクトを中心とした家族に適用しているようだが、アメリカではどうなのだろう?性的虐待の場合はありえないと思うが、ひどい身体的虐待の場合でも、親と子の両方に会議に参加してもらうのだろうか?それとも親だけ会議に参加する?


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No.83  武川正吾・三重野卓編『公共政策の社会学――社会的現実との格闘――』
東信堂 2007年


キーワード:公共政策、政策科学、政策評価

英国では、1980年代以降のNPM(New Public Management=効率性を重視した政策管理)の下で、EBPが実践家に求められるようになった。アメリカでは従来からの説明責任の要請に加えて、マネジドケア環境がそれを強調している。

わが国のソーシャルワーク研究でも、近年、EBP: Evidence-Based Practice(根拠にもとづく実践)とか、 Best Practice(最高の実践)といったことが重要だ、という主張を見かけることが多くなってきた。

いまのところ、福祉の実践現場でEBPの必要性が強く認識されているようには見えない。だが、本書にあるように、社会福祉政策においても政策評価が、社会学などによって本格的に進められていくようになると、あるいは、行政の福祉部門管理職にNPMの発想をもつ人が増えてくるようになると、実践現場にEBPをもとめる傾向が出てくるかもしれない。

EBPは、目標達成(問題解決、問題発生予防)に効率的、あるいは効果的という方法を用いて実践する、というものである。この目標にはこの方法がよい、という評価を行うには目標達成を示す指標とその測定方法を定めなければならない。しかし、ソーシャルワーク実践は、多様な目標を含み、その目標達成を測定可能な指標で表すことが困難であることが多い。また、支援の方法もあれこれ試みるというのが普通である。

それゆえ、EBPはケアワークとは比較的なじみやすいが、ソーシャルワークとはなじみにくい。そう考えるのが一般的だろう。しかし、ソーシャルワークを含むサービス事業について、その効果を評価する、という作業は、自分たちの実践=サービスの質を点検するという専門職としての義務から言っても必要なことである。

サービス事業評価の方法については、ロッシ『プログラム評価の理論と方法――システマテックな対人サービス・政策評価の実践家ガイドーー』が勉強になる。合わせて本書、特に、終章の「政策評価と社会学」(三重野卓)もわかりやすく参考になる。序章「公共政策と社会学」(武川正吾)では、なぜこれまで社会学が「公共政策から遁走」していたのか、また、これからどう取り組むか、説得的に記述している。


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