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No76 森川美絵 『「義務としての自立の指導」と「権利としての自立の支援」の狭間で
――生活保護におけるストリート官僚の裁量と構造的制約―― 』
(三井さよ・鈴木智之編著『ケアとサポートの社会学』 法政大学出版会 2007年)

キーワード:ケア、サポート、自立支援、生活保護、ソーシャルワーク、自立支援プログラム

生活保護制度に、2005年度から「自立支援プログラム」が導入されることになった。生活保護受給者のなかに、従来の「高齢者」「母子」「障害者」「傷病者」として括られる人々ではない人々、つまり、稼働能力をもった長期失職者や「ワーキングプア」が一定数増えてきたからだ。

「自立支援プログラム」にもとづいて、「自立支援」を担うことになる生活保護ワーカー(ケースワーカー、現業員)は、今後、その役割を果たせるのか?

本論は、「自立支援」定着の困難性を実証データによって明らかにしたうえで、困難の要因について検討し、今後の課題について述べている。

実証データは、「自立支援プログラム」導入前に行われたものであるが、それによると、生保ワーカーの約6割が「担当ケースの自立を助長する援助を行うための業務(自立助長の指導、関係機関とのサービス調整、家庭訪問等)」を「行えていない(まったく不十分+あまり行えていない)」としている。

また、「生活保護業務や生活保護行政のあり方について日ごろ感じていること」を自由回答で尋ねた結果では、権利ばかりで義務が果たされていない、という「義務としての自立」を指摘する声が圧倒的で、「権利としての自立」についての記載はなかった。

自立助長の困難と「義務としての自立」の強調は、担当ケース数が多すぎること、ベテラン配置が減少していることなどが主要な原因と考えられるが、「権利としての自立の支援」のためには、生保ワーカーの「自立へのはたらきかけの志向性」に枠を与える「指針」の整備が求められる。

森川は、ストリート官僚としての生保ワーカーの裁量と、業務指針との関係について言及しながら、自立支援が各自治体任せではなく、法や実施要領などで標準化していく必要性があると論じている。

「自立支援」においては、利用者の置かれた状況の多様性や利用者の状況への意味づけなどに配慮し、個々の利用者に応じた支援の中身や技法が問題となる。生活保護制度の執行に、一般事務職ではなく、社会福祉主事という任意資格をもった「専門職」を配置するのは、受給者の個別性を前提とし、ソーシャルワークの技法を活用して「自立助長」を目指そうということであった。つまり、法制度には盛り込めない個別の「援助」を、「専門職」を配置し、法制度枠内の裁量の範囲で実施していくということだ。「自立支援」の技法をプログラムレベルではなく、技法レベルで標準化し、制度化するとしたら、どういうふうになるのだろう?

いずれにしても、ソーシャルワーク論の一般的なテキストでは、森川の言う「権利としての自立支援」を価値前提として、そのための技法をもっぱら説明してきた。しかし、現実は、森川らが明らかにしたように、それは行われてはおらず、ワーカーは「義務としての自立指導」の必要性を主張している。そういう現状を押さえたうえで、現状を変えるとしたら、何をどうしたらよいのか(制度、組織、実践者、援助技法のそれぞれのレベルで)。森川らのような実証研究を踏まえた議論を、ソーシャルワーク論でももっと行うべきだろう。

三井らの『ケアとサポートの社会学』には、他にも興味深い論文が少なからず入っている。

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