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福祉関連の本の紹介と、ちょっとした福祉にかんする話題を提供するコーナーです

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No.65  越智元篤 『精神科看護師、謀反:極私的「革命」レポート』 文芸社 2006年 

キーワード:精神科、看護師、精神科看護、教育指導


このブログでコメントをくださった方の本である。精神科看護師として日々考えている看護論をブログでつづったものを本にした、と「まえがき」にある。

精神科看護の現場で起きていることをきっかけに、越智さんが考えた内容は、精神科病院や一般病院に限らず、官庁や企業、学校などに所属する人でも「そうそう」と思ってしまう、「管理職論」、「教育指導論」、「人事管理論」、「組織運営論」、「カンファランス論」などであり、カウンセリングやソーシャルワークにもあてはまる「傾聴論」などの「看護論」である。

たとえば、「職場で指導するときに、指導する相手に『なぜわかってくれないのか』と思ったことはないだろうか。そのとき、たいていの人が思うのは、相手の理解力を基準にして考えてしまうということである。(中略)(ある上司は、)『なぜ意見を言わないのだ』『なぜ指導事項が守れないのだ』と身近な部下に、積極性に欠ける部下のことを聞いたり愚痴ったりする。これは、メタ認知能力というものを意識していえるとは思えない行動である。己の指導方法と相手のレデイネスとの相互の関係を考えたことがないのだろう。」

ビジネス書にもこうした指摘は書いてあるのかもしれない。だが、実践現場の話しを踏まえて書かれていると、イメージがわき、考察に説得力がある。医療や看護、福祉、教育の実践現場では、耳の痛い人、逆に、拍手喝采する人、ともに少なからずいると思われる。

魅力的なのが、二段構えの情報戦略である。越智さんは、「情報提供については、まず頭のなかで考える。一度どうするか判断する。これが第一段階の思考。ここまでは、人間誰でもがたどる思考である。このときに出た判断結果を今度は逆に否定してみることがポイントである、と私は思う。これが第二段階の思考である。第二段階の思考を深めることで思考が柔軟になり、さらにいろいろな方法へと思考が広がるのである。」と書く。

看護現場で起きていること、体験したことが、この二段構えの考察によって、構造的に解明され、つぎの考察につながっていく。考察の内容はさることながら、この過程が面白い。

「まえがき」に、「現在28歳」、「精神科病院に勤めて10年」とある。「まえがき」に記載がなかったら、著者をもう少し年上の30代か40代の人、と思ったかもしれない。この後、どんな本を出していくのか。
越智さん、楽しみにしています。
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No64 河原ノリエ「ルポ:ややこしい子とともに生きる(上)」世界10月号、2006年

キーワード:発達障害支援法、地域療育センター

「軽度発達障害」と呼ばれる子どもたちは、「出産時の微細な脳のダメージなどによる器質的、機能的な障害で、ほんのわずかの発達の隔たりや遅れのある子どもたち」である。軽度であって、「はっきりとした障害ではなく、障害の表れ方も一人ひとり多様なため」、「一般社会はおろか福祉や教育の現場でも、理解と支援がなかなか得られてこなかった。」

ジャーナリストで、東京大学先端技術研究センター研究員である河原さんは、「軽度発達障害」の「ややこしい子」を抱えたお母さんである。河原さんが、年齢が進むにつれ子どもの特性に合った支援を求めたとき、「重度の障害児療育に携わる現場の人たち」は、「障害は治すものではなく、その子の状態そのものだ」「子どもを発達可能態としてとらえることは、障害児こそがもつ世界を否定することになる」といった「障害者観」を河原さんに投げつけたそうである。

また一方で、「バス代がタダになるから軽度に認定してもらって『愛の手帳』をもらっておけば?」と「やさしい刃」をつきつける人もいた。

河原さん自身、「健常と障害というボーダーラインにこだわりもがいている」のは、「自分の子どもを障害者にはさせたくないと言い続けているようで、自分自身が許せなかったこともある。」親もまた、「どっちつかずの宙ぶらりんの苦しみ」を抱えているのだ。

「専門家」にも理解してもらえない子どもと親にとって、「発達障害者支援法」の施行は、理解と支援を促進するものとして歓迎されるものである。しかし、施行されたものの、各地の取り組みは遅く、河原さんが納得いくものとしてなかなか進んでいない。

そうしたなかで出会った光明が、横浜市の「1歳6ヶ月検診」と、「軽度発達障害」の子どもと親を十分に理解し、的確なアドバイスをしてくれる東部地域療育センターのソーシャルワーカー、上原さんである。

この上原さんは、この「おすすめ本」のブログNo6で紹介した上原さんである(上原文『ソーシャルワーカー:理論と実践にーー現場からみたソーシャルワーカーの仕事――』ブレーン社)。

河原さんが紹介する、「(子どもや親を)支援する人(教師たち)を支援する」上原さんの活動は、上原さんの言葉どおり、ソーシャルワークの理論の実践化である。上原さんがお母さんたちに対して、また、教師に対して、どのような言葉遣いをしながら支援をしているのか、河原さんがビビッドに紹介してくれている。

このルポは次号に続くらしいので、ぜひ、読みたい。また、多くの人に読んで欲しい。

質の高いソーシャルワーカーの仕事ぶりが、多くの人に理解されるのはうれしいことだ。
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