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福祉関連の本の紹介と、ちょっとした福祉にかんする話題を提供するコーナーです

No55  好井浩明 編著 『繋がりと排除の社会学』 明石書店 2005年

キーワード:日常的排除、繋がり、差別、リアイリティ齟齬

社会福祉で「排除」という用語を聞くと、「社会的排除(ソーシャルイクスクルージョン)」、「貧困」「アンダークラス」といった用語をすぐ思い出す。本書は、そうした社会構造的問題としての排除ではなく、日常生活において私たちが普通に行っている「いま、ここ」で生じている「自明なもの」としての排除を取り上げている。

興味深いタイトルの論考が7つ納められている。ソーシャルワークとの関連で関心を引いたものに、西倉実季「『クレイム申し立て』としてのインタビュー:顔にあざのある女性の『問題経験』をめぐる語りから」と、石川良子「『ひきこもり』に関わる人々が“現場”に居続けるための実践」があった。

この2つは、好井さんの言葉を借りると、「日常生活における排除の様相」を明らかにしたというより、「排除の様相を読み解こうとしている術のなかに、そうした術を意味あるものとして使用している実践のなかにある排除の様相」を論じている。

西倉さんの論文では、「顔にあざのある」当事者にそのことの意味を尋ね理解しようとしたインタビューアー自身が、明確に意識してはいないものの、「顔にあざのある」ことについての解釈、思い込みをもっており、それが、インタビューイー、つまり、当事者にとっての意味、当事者が語っているリアリティを排除してしまうプロセスを記述している。そのリアリティ排除を敏感に感じたインタビューイーが、反撃すべく発言した内容が、このプロセスの存在をインタビューイーである著者に気づかせている。

ソーシャルワーク論において、近年、ナラティブアプローチ(物語アプローチ)の人気が高い。ソーシャルワーカーら援助職は、一定の知識と体験にもとづいて問題・ニーズを解釈する。しかし、その「専門知」が、クライエント、当事者のリアリティを抑圧し、さらにはデイスエンパワメントしてきたのだから、その「専門知」をカッコに入れて、当事者の語りを聞き、当事者のリアリティを理解するところから始めよう、、、、。

ナラティブアプローチをこの程度の理解で使うのなら、やはり、その面接過程はクライエントのリアリティ排除に陥る危険性があるのではないか。ソーシャルワーカーが面接する多くのクライエントは、サービス利用希望者、あるいは、サービス利用者であるから、反撃はむずかしい。

石川さんの論文からは、援助職は、クライエントだけでなくボランティアの感じる脆弱性にも、ときに思いを至らせ、謙虚さを取り戻す必要のあることを感じた。

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