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福祉関連の本の紹介と、ちょっとした福祉にかんする話題を提供するコーナーです

No.53  阿保順子 『痴呆老人が創造する世界』 岩波書店 2004年

キーワード:痴呆老人、認知症、コミュニケーション


以前、病院に入院する認知症のお年寄りの日常生活を描いた羽田澄子監督の映画を見たことがあるが、本書は、文字でそのお年寄りの世界を描いている。

初めは、具体的なやりとりの場面がなかなか頭に描けない。だが、徐々にクリアにイメージできるようになっていく。病院の決められた生活のなかでもまた、お年寄りたちは、厳しく、切ない、それなりに刺激のある「社会生活」を送っている。その様子が、面白く、かつ、リアルにうまく描かれている。

看護のプロ・研究者でありながら、文化人類学者のようにお年寄の世界にさりげなく「侵入」し、コミュニケーションを試みながら、お年寄りの人間関係のパターンや人間関係の複雑さ、社会的な存在としての人間を観察している。

ケアの担い手もまた、こうした視点をもってお年寄りを理解してみてはどうだろう。

アルツハイマーや脳血管障害などによる認知症のお年寄りは、通常とは少し異なる意味世界にいる。生活不活発(?)がもたらす、短期記憶力の低下、見当識障害といった認知症状をもつお年寄りたちは、了解可能な生活をしている。本書のように、読み物としても面白い、社会科学の視点による実態報告としても興味深いものは、彼らについては書けないだろうか。
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