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福祉関連の本の紹介と、ちょっとした福祉にかんする話題を提供するコーナーです

No52 向谷地生良 『「べてるの家」から吹く風』 いのちのことば社 2006年

キーワード:べてるの家、精神障害者、当事者研究、仲間の力、ソーシャルワーカー

べてるの家については、本もVTRもたくさんある。それでも新しく出た本書を買って読んでみたいと思わせてしまう魅力が、べてると向谷地さんにはある。

ソーシャルワーカーであり、キリスト者である向谷地さんは、ティリッヒの説;ソーシャルワーカーの実践、すなわち、人を愛するという営みは、困難に陥っている人を「引き上げる業」としてあるのではなく、そのなかに「降りていく業」として現さなければならない、を紹介している。

人間はひたすら「死ぬ」という連鎖のなかで生かされている、「にもかかわらず」生きようとすることが「存在への勇気」であるというメッセージが、ソーシャルワーカーとしての実践の礎となってきた、と向谷地さんは言う。

また、次のようにも言っている。人を「愛する」とか「信じる」ということは、もっとも愛しにくく、もっとも信じにくい状況、すなわち絶望からもたらされる。「にもかかわらず」愛し、信じることが問われている。「愛しやすいこと」を愛し、「信じやすいこと」を信じることから回復ははじまらない。

その向谷地さんにとって、ソーシャルワーカーら援助専門職は、この意味で「『人を愛する』ということを職業的に志す人たち」である。

こうした向谷地さんの人間像やソーシャルワーク論は、べてるの家やその仲間の話のなかでとても自然に聞こえる。

かつて、ラップたちは、精神障がいをもつ人々のもつストレングス(強み、良さ、長所など)に焦点を当て、そのストレングスを活かすよう支援していくというストレングスアプローチのケースマネジメントを主張した。

発展型の近代的人間像、裏切りや翻弄のなかの不信・苦渋・絶望を想定すらしない「能天気な」調整型のソーシャルワーク論が、少し貧相に見えてくる。
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