FC2ブログ

Book+

福祉関連の本の紹介と、ちょっとした福祉にかんする話題を提供するコーナーです

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- --:-- | スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-) |
No46 安藤寿康・安藤典明編 『心理学者のための研究倫理』 ナカニシヤ出版 2005年

キーワード:心理学、研究倫理、倫理綱領

福祉の研究者、特にソーシャルワークの研究者は、利用者さんや相談者さんの生活状況や援助経過、援助結果などについて、ヒアリングや参与観察といった方法によって研究しようとすることが少なくない。そのとき、自分の研究計画やフィードバックの方法を十分説明し、施設管理者だけでなく当事者である彼らに理解を得るよう最大限の努力をしているか。援助者ではなく研究者として関与することが、当事者の生活に与えてしまう変化は、研究上許される範囲のものかどうか、検討しているか。福祉においても、こうした研究倫理の問題が意識されるようになってきた。だが、まだ十分ではないようにみえる。

本書では、架空ではあるがよくあるような話として事例にまとめ、それをもとに、心理学の研究倫理を具体的に検討し、議論している。心理学の研究もリアリテイを求めて、実験室を出るようになった。フィールドでの観察や面接、実験を行うようになったために、また、学生や院生など初学者もそうしたことを行うため、研究倫理の検討は改めて「発見」されたのだという。もちろん、社会全体における倫理意識の高揚も背景にある。科学技術の急激な進展に伴う倫理の要請(生命倫理、環境倫理、情報倫理、先端科学技術倫理など)、それに、規制緩和考え方(自由の拡大と自己責任の強調)がもたらすアカウンタビィリティと権利尊重の観念の強化が、倫理に対する意識を高めている。

具体的には、研究についてどう伝えるか(インフォームドコンセント)、どこまでやって許されるか、報告はどうすればよいか(研究成果のフィードバック)、プライバシーはどう守られるか(発表の仕方)、研究結果をいかに表現するか、などを検討している。すっきりとした答えがいつもあるわけではないが、どう考えたらよいのかという考え方を提示している。

福祉において、倫理上の問題が起こるのはいやだから観察や面接による研究は避けよう、というのではなく、そうした研究の必要性をどのように説得し、どのように「慎重に」挑戦していけばよいのか、本書から学ぶことは少なくないと思う。

スポンサーサイト
No45 木原活信 「自分史と福祉実践――対抗文章としての記録(ナラティヴ・リコード)についてーー」ソーシャルワーク研究 Vol.31 No.3 、2005年

キーワード:ソーシャルワーク、記録、ライフストーリー


ソーシャルワーク教育において、記録は大変重要であると教えられる。たとえば、記録は、アセスメントや支援計画作成に役立てる、クライエントとの情報共有に活用する、などクライエントに対してよりよい支援のために必要、また、援助者が交代しても支援の継続性や一貫性を保つため、他機関との情報共有のため、など援助機関の機能を高めるために不可欠、さらに、スーパービジョンや訓練のために活用する、調査研究に役立てる、などのためにも必要である、と学ぶ。

これに対し、木原さんは、援助者による記録を絶対視(承認)しないという、批判的な視点をもつことが援助者自身に必要であると、新しい視点の取り込みを提案している。批判的な視点を教えてくれるのが、福祉の領域における当事者自身の書く記録、つまり、自分史である。自分史は、パーソナル・ナラテイヴ・リコードであって、生活綴り方運動やふだん記運動が、歴史家の客観的歴史に対抗するものとして機能したように、自分史も援助者による記録(ドミナント・ストーリー)への「対抗文章」として位置づけることができる。

本稿では、自分史を援助実践に取り入れている、児童養護におけるライフストーリー作成の実践を紹介しているが、自分たちの生い立ちの記録をソーシャルワーカーや里親たちの支援を得ながら作るという欧米での試みの導入は、大いに関心をそそられる。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。