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福祉関連の本の紹介と、ちょっとした福祉にかんする話題を提供するコーナーです

No6 上原文『ソーシャルワーカー:理論を実践にーー現場からみたソーシャルワーカーの仕事――』ブレーン社、2005年

キーワード:ソーシャルワーカー、理論と実践、自己覚知、自閉症、療育センター

現役のソーシャルワーカーさんや元ソーシャルワーカーさんが書いた本はかなりある。この本も、長年、自閉症児や保護者を支援するソーシャルワーカーとして活動してきた上原さんが著した本である。だが、これまでに読んだ類書とは少し趣が違う。
現在、横浜市中部地域療育センター福祉相談室室長である著者が、ソーシャルワークを勉強している学生や、ソーシャルワーカーとして歩み始めた若い人々に、また、仕事がマンネリ化しがちな中堅のソーシャルワーカーに、さらには、大学などでソーシャルワークを教えている教員などに対し、ソーシャルワーカーは「理論を現場に翻訳していく職業」であるという持論をもとに、「ソーシャルワークというのはここが大事、ちゃんと理解してくださいね」というメッセージを送っている。
といってもむずかしいことを言っているのではない。たとえば、「象の論理とパッキンの論理」。多様な専門職は象(問題状況)をそれぞれの視点から見て深く分析する。しかし、耳の分析、鼻の分析といった各パーツの分析だけでは象を理解することはできない。像を全体としてとらえること、また、象のいる場所や象がこれから進んでいく道を見て、必要なら整備していくこと。これがソーシャルワーカーの役割。また、りんごを箱詰めにする際、安定化のためにパッキンを入れるように、どの専門職も対応しきれない部分を埋めていくのがソーシャルワーカー役割、といった具合。
「情念」も大事だが、「理論」や「知識」が、また、それらを現実に生かしていく「術」がなかったら福祉の仕事にはならないということを、種々の具体的な話を通して説得的に語りかけている。
地域で人々の生活を支援するソーシャルワーカーは、多様な役割をこなすジェネラリスト・ソーシャルワーカーであることが、本書を通してよくわかる。また、ソーシャルワーカーとして働くためには、福祉の「術」と、社会や組織で働く者としての「技術」(社会的スキル)の両方が重要なことを改めて確認した。
 ソーシャルワークに関心をもつ人々にぜひ、本書を薦めたい。


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