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福祉関連の本の紹介と、ちょっとした福祉にかんする話題を提供するコーナーです

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No8 安田雪『人脈づくりの科学:「人と人との関係」に隠された力を探る』日本経済新聞社、2004年

キーワード:ネットワーク、人間関係、人脈、パーソナルネットワーク

優れたソーシャルワーカーとはどういう人か。その指標はいろいろ考えられるが、質の高い情報を収集できるパーソナルネットワーク(人脈)をもっているか否かもその1つだろう。そうしたパーソナルネットワークをつくるにはどうしたらよいか。ソーシャルワークの技術としての人脈づくりである。
個々のワーカーさんたちは、普段からいろいろな工夫をされていると思うが、本書はその人脈づくりを「科学する」ということなので読んでみた。
ネットワーク分析の結果を踏まえて、原則1「未来が感じられる、継続性のありうる関係こそがネットワークである」から始まって、原則9「他者の関係を仲介できる位置を占めよ」、原則23「自ら情報を収集し発信するハブに、情報は集まる」など、ソーシャルワーカーにも役立ちそうな戦略や知識が紹介されている。
優れた人脈づくりのための基本メッセージは、「遠くの人との関係を大切にせよ」「異なる社会圏の人々とのかかわりを大事にせよ」「自然にゆだねず、微調整を試みよう」とのこと。これらは、仕事のうえの人脈づくりだけでなく、これからますます必要となる地域の支えあいネットワークづくりにとっても重要なメッセージなのでは?
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No7 松川由紀子『ニュージーランドの子育てに学ぶ』小学館、2004年

キーワード:スロー保育、子育て支援、親育ち、保育園

  わが国の子育て支援に役立つ情報を、「親に優しいスロー保育の伝統」をもつニュージーランドから学ぼうという本である。
各種のサービスが紹介されているが、「実演と説明で無理なく子育てノウハウを伝えるパフトプログラム」というのが興味を引いた。これは、保育者資格をもった担当者が定期的に家庭を訪問し、乳幼児の発達に合わせて実演しながら育て方のヒントを与えていくという親教育サービスである。もちろん、家庭訪問を望む家庭を訪問するわけだが、1人親家庭や若年家庭、少数民族の家庭など、ある程度対象を絞って、本サービスは提供されているようである。
わが国では保健師による家庭訪問はあるけれど、保育士による実演しながらの「親育ち」支援はまだ発達していない。虐待予防として、ハイリスク家庭に専門家を派遣するサービスは制度化されたようだが、積極的に取り入れようという自治体はまだ少ないようだ。パフトプログラムを導入することは容易ではないだろうが、子育て支援センターや子ども家庭支援センターにまで出て来ることができない親たちに対するサービスとして必要ではないかしら。
もっとも、子育て支援をなにもかも「専門家」に任せていくということでよいのか、という疑問も出てくるだろう。地域で相互に支援できればよいのだけれど、今は、同じ乳幼児をもつ親同士でも、自分たちでコミュニケーションをとり関係をつくっていくのはむずかしいらしい。とすると、「専門家」が介在して子育て、「親育ち」を支援する必要はやはりあるかも。
  とにかく、今、子どもは親にとっても「異文化」。だから、子どもとの向き合い方を「実演」して示すとともに、「指導」や「助言」ではなく、ストレスの多い体験を「受け止め」てあげる必要がある、と松川さんは言っている。
  要介護高齢者の介護者には、介護方法を直接教えてくれたりグチを聴いてくれるケアマネジャーやヘルパーがいるのに、家庭で乳幼児を育てている親には誰もいない。やはり、「親育ち」の支援は必要なんだろう。
No6 上原文『ソーシャルワーカー:理論を実践にーー現場からみたソーシャルワーカーの仕事――』ブレーン社、2005年

キーワード:ソーシャルワーカー、理論と実践、自己覚知、自閉症、療育センター

現役のソーシャルワーカーさんや元ソーシャルワーカーさんが書いた本はかなりある。この本も、長年、自閉症児や保護者を支援するソーシャルワーカーとして活動してきた上原さんが著した本である。だが、これまでに読んだ類書とは少し趣が違う。
現在、横浜市中部地域療育センター福祉相談室室長である著者が、ソーシャルワークを勉強している学生や、ソーシャルワーカーとして歩み始めた若い人々に、また、仕事がマンネリ化しがちな中堅のソーシャルワーカーに、さらには、大学などでソーシャルワークを教えている教員などに対し、ソーシャルワーカーは「理論を現場に翻訳していく職業」であるという持論をもとに、「ソーシャルワークというのはここが大事、ちゃんと理解してくださいね」というメッセージを送っている。
といってもむずかしいことを言っているのではない。たとえば、「象の論理とパッキンの論理」。多様な専門職は象(問題状況)をそれぞれの視点から見て深く分析する。しかし、耳の分析、鼻の分析といった各パーツの分析だけでは象を理解することはできない。像を全体としてとらえること、また、象のいる場所や象がこれから進んでいく道を見て、必要なら整備していくこと。これがソーシャルワーカーの役割。また、りんごを箱詰めにする際、安定化のためにパッキンを入れるように、どの専門職も対応しきれない部分を埋めていくのがソーシャルワーカー役割、といった具合。
「情念」も大事だが、「理論」や「知識」が、また、それらを現実に生かしていく「術」がなかったら福祉の仕事にはならないということを、種々の具体的な話を通して説得的に語りかけている。
地域で人々の生活を支援するソーシャルワーカーは、多様な役割をこなすジェネラリスト・ソーシャルワーカーであることが、本書を通してよくわかる。また、ソーシャルワーカーとして働くためには、福祉の「術」と、社会や組織で働く者としての「技術」(社会的スキル)の両方が重要なことを改めて確認した。
 ソーシャルワークに関心をもつ人々にぜひ、本書を薦めたい。


No5 大岡頼光『なぜ老人を介護するのか:スウェーデンと日本の家と死生観』けい草書房、2004年

キーワード:福祉国家、老人介護、規範意識、人格崇拝、死生観、共同墓

 2000年度からスタートした介護保険をどのように持続可能な制度に改変するか、介護保険を支えるケアマネジャーの質をどのように担保していくか。そうした実践上の議論ばかりを見てきた私にとって、「なぜ老人を介護するのか」という問いが新鮮で購入した。
 私は、介護保険によってサービス利用意識や権利意識が高まったという見方をしている。また、最近は、高齢者の虐待やネグレクトに関心をもっている。だから、「介護は身内のものがすべき、福祉の世話になるべきではない」という規範意識(大岡さんはこれを「家の境界」意識と言っている)が日本には強く残っている、それが、自分の問題関心の出発点だと序に書いているのを読んだときは意外な感じがした。でも、こういう別の見方って、きっと大事。
 未来の労働力ではなく使い終わった労働力としての老人を公的に介護する、それを正当化する論理は、彼によれば「人格崇拝」の観念だ。分業化が進み、複雑化した社会では、個人の多様化も進む。そうしたなかで、私たちが唯一共有できるのは「聖なる人間性=人格」である。だから、私たちは「人格」に価値を与えることになる。「人格崇拝」のもとでは、老人はなんら成果を生み出さなくても、人間性をもつ限り「聖なるもの」であり、聖なるものへの儀礼として、老人の介護を公的財源により行うことが可能になる(2章)。
なるほど。もっとも、これは老人介護だけでなく、年金、医療などすべて政策(つまり、福祉国家)の正当化の論理だけれど。この論理を使えば、老人福祉法の第2条(基本的理念)「老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として、かつ、豊富な知識と経験を有する者として敬愛されるとともに、生きがいを持てる健全で安らかな生活を保障されるものとする。」という条件つき敬愛と保障は、大いに批判できる。
この本を読んでいて面白いのは、「人格崇拝」が同時に保障の打ち切りにもつながるという話や、効率性に貢献しうる可能性をもつ人間にのみ「人格」を認める政策が行われる、だが、スウエーデンでは家族にも社会にも貢献しなかった老人を保障をする「国民の家」という論理があった、といった話、さらに、日本の養子制度や無縁仏、共同墓、生まれ変わりという観念の検討などなど、福祉国家の規範意識をめぐって、思考が広く展開していくところである。
福祉は無縁の者を保護・救済するところから始まり、家族のいる者にまで広く援助・支援するものになった、と理解してきた私にとって、なぜ、無縁の者にまで保障するのかを宗教社会学などの観点から検討するという試みは興味深かった。
No.4 アミタイ・エツィオーニ『ネクスト:善き社会への道』麗澤大学出版会、2005年

キーワード:コミュニタリアニズム、善き生、善き社会、公共哲学

エツィオーニといえば、古くから社会学の第一人者で組織論の大家。その人が1990年頃から主張していたというコミュニタリアニズム。今度翻訳が出て、朝日新聞の書評欄でも取り上げていたので読んでみた。9.11の前に書かれた本なので楽観主義的な感じはするが、民主党よりの中道主義にもとづく理念と政策提案の多くは、納得のいくものだった。
「善き社会は物質的な豊かさの水準をさらに向上させることの上に構築されうるのか、または、私たちは、善き社会を、互恵や精神性といったその他の諸価値の中心に据えようと努力するべきか」道徳的対話を重ねる必要があると、エツィオーニは言っている。
ただ、アメリカのある大学院に留学してソーシャルワークを学び、アフロンアメリカンの多いコミュニテイで実習を体験している私の若い知人の体験談などを聞いていると、彼の言う道徳的対話は、ローカルなレベルではなかなか難しいように感じる。難しいがゆえに、こうした主張が強くなされるのかもしれない。
監訳者の小林正弥さんによる「解説」はとってもわかりやすい。実践を通して善き社会や善き生の実現を支援していくソーシャルワーカーも、ときにこうした本を読んでみたらどうだろう。
No3春日武彦『はじめての精神科:援助者必携』医学書院、2004年

キーワード:精神科、精神疾患、援助者、援助スキル

 ご存知、春日先生の援助者応援マニュアル。『病んだ家族 散乱した室内:援助者にとっての不全感と困惑について』(医学書院、2001年)も面白かったけれど、本書は、保健師や看護師、ソーシャルワーカー、ヘルパーなどに役立つ援助スキルをていねいにわかりやすく解説してくれている。春日スピリットもあちこちに見られて面白い。
 特に、児童や高齢者福祉分野のソーシャルワーカーやヘルパーさんで、これまであまり精神疾患や精神障害について学んでこなかった人々、しかし今、地域に出向くことが多くなってその必要性を感じている人々にお薦め。
No2:山野則子「ソーシャルワーカーのアドボカシー機能について:虐待ケースの事例分析に基づいて」
子どもの虐待とネグレクトVol.3,No.2,2001年

キーワード:アドボカシー、児童虐待、所属組織との交渉、組織      技術

 児童虐待防止法の成立の翌年に発表された論文。ソーシャルワークにおける2種類のアドボカシー(ケース・アドボカシーとクラス/コーズ・アドボカシー)のうちの、ケース・アドボカシー(個別事例に関する権利擁護活動)について、Batemanのモデルを事例にあてはめて説明している。
 考察として、①モデル第5段階における活動的交渉の「相手方」には、ソーシャルワーカーの所属組織が含まれること、②所属組織との交渉過程では、倫理のジレンマ(所属組織への忠誠か、クライエントの利益の追求か)が必ず生じること、③所属組織との交渉は活動的交渉における鍵となること、④所属組織との交渉スキルはソーシャルワーカーが獲得すべきスキルの1つであること、などをまとめている。
 ソーシャルワークにおける組織技術(所属組織の一員としての枠組みのなかで、クライエントを守りその利益を追求するために、組織をいかに活用するかというスキル)を理解するにあたって、本論文はよいマテリアルの1つになると思われる。
No1:渡部一史『こんな夜更けにバナナかよ:筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』
北海道新聞社、2003年

キーワード:ボランティア、障害者、自立生活、援助関係、

発行後1年間で10刷り、賞もとった有名な本。障害者と健常者との「つながり方」や「信頼関係の築き方」の多様性や、関係のむずかしさ、面白さ、意味の深さ、などを、また、それらを通して、専門職、つまり、援助のプロと障害者との援助関係についても考えさせられる。
 あるとき、雑談のなかで学生さんの1人が「障害者問題や障害者福祉を勉強するのはなんとなく怖い感じがする」と言ったことがあった。そのとき「障害をもつ人々と触れ合ったり、その生活を考えることで、自分自身が揺さぶられる感じがするからでは?でも障害者福祉が福祉の原点だからね」と言ったが、彼女に本書を勧めればよかった。彼女に次の1節を伝えたい。
「親子であれ、夫婦であれ、友人関係であれ、一定以上に親しい人間関係において、人は誰しも相手に対して肯定とも否定ともつかない複雑な寛恕を抱くものだが、間に『障害』や『病気』が挟まると一層複雑さを増してくる。(中略)
 しかし、『障害者』や『病者』と向き合うとは、じつは、自分の中にあるこうした複雑な気持ちの振幅に正直に向かいあってみることではないのか、と私は思い始めている」(p.305)
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