FC2ブログ

Book+

福祉関連の本の紹介と、ちょっとした福祉にかんする話題を提供するコーナーです

No49 福山和女 編著 『ソーシャルワークのスーパービジョン-------人の理解の探求--------』
ミネルヴァ書房、2005年

キーワード:ソーシャルワーク、スーパービジョン、コンサルテーション、心理社会的アプローチ、家族療法アプローチ


日本には、アメリカのように、夫婦関係、親子関係、家族関係に関するカウンセリングを行う家族福祉機関や、ソーシャルワーカーが関与するメンタルヘルスの相談機関が、これまで少なかった。それゆえ、心理社会的アプローチや家族療法アプローチにもとづく援助実践に対するスーパービジョンに関する文献は乏しかった。

日本の多くのソーシャルワーカーに求められてきたのは、生活における基礎的なニーズを充足させるサービス資源の調整、つまり、ケアマネジメントを中心としたソーシャルワーク実践であった。もちろん、サービス資源の調整だけではすまない事例、面接継続が必要と思われる事例も多くあるが、それを望まない事例、それを実施できない組織構造というものがあった。

しかし、子育てや子どもの「不登校」、「引きこもり」、非行、家庭内暴力などで悩む親たち、いっときでも早く相談し、援助を受けたいと思う親たちは大勢いる。高齢者福祉の分野でも、家族関係を理解し調整をしなければ、高齢者と介護者の生活を護れない、という場面が少なからずある。こうした親たちや家族に出会い、対応に努力しているソーシャルワーカーたちにとって、本書は大変勉強になるのではないか。スーパービジョンを通して、クライエント/利用者の理解、クライエント/利用者とワーカーの関係性の意味や関係性の展開技法、面接過程の進め方など、多くのことを学ぶことができる。

社会福祉士の養成教育は、サービス資源の結合というケアマネジメントを中心とした教育にならざるを得ないが、ソーシャルワーク実践の現場では、それではすまない事例が少なくない。本書のような質の高いスーパービジョンを実際に受ける機会をふやす努力が必要だ。


No48 J.D.ケーグル・久保紘章他 監訳『ソーシャルワーク記録』相川書房 2006年

キーワード:ソーシャルワーク、記録、プライバシー、個人情報、アクセス権


 近年、看護や保健師の「記録」に関する文献の刊行が目立つように感じる。昨年4月の個人情報保護法の施行が関係しているのかもしれない。このたび、ソーシャルワークの「記録」に関するケーグルの本が翻訳された。もっとも、本書はもっと早く刊行される予定だった由。

 本書は、ケーグルの再版本(1991年、初版は1984年)の翻訳書であるが、古さを感じさせない。日本では、ソーシャルワークの記録に関する議論があまりなされてこなかったこと、今日、ようやくそうした議論を必要とする実践の現場が広がってきたこと、などがその理由だろう。

 ケーグルによれば、現代のソーシャルワーカーは記録をつける際、アカウンタビィリティ(説明責任)と効率、プライバシー保護、の3つの価値のバランスをとらなければならない。では、ソーシャルワーカーは何を、どのように、どの程度、書いていけばよいのか、組織はどのように管理すればよいのか。ケーグルは、役立つガイドラインの提示を試みている。

 長い間、「記録」が専門職のためにあったものを、第一義的にクライエントのためのものに代え、記述の方法や内容を変えていく。本書は、この観点で一貫している。特に、クライエントのプライバシー保護のために、「記録」はどうあるべきか、また、クライエントの個人情報へのアクセス権に対してどう応えるか、しつこいくらいに記述している。

日本でも、効率的に質のいい記録をいかに書いていくか、関心が高まっている。役所や民間事業所、開業医などが保有する個人情報を開示して欲しいという要求も出てきている。ソーシャルワークの「記録」は、クライエントや利用者に関する情報だけを記述したものではないが、大方はそうである。「記録」は、クライエント、利用者への開示を前提とし、「記録」はクライエント、利用者のもの、といった感覚で記述することが必要なのだろう。

No45 木原活信 「自分史と福祉実践――対抗文章としての記録(ナラティヴ・リコード)についてーー」ソーシャルワーク研究 Vol.31 No.3 、2005年

キーワード:ソーシャルワーク、記録、ライフストーリー


ソーシャルワーク教育において、記録は大変重要であると教えられる。たとえば、記録は、アセスメントや支援計画作成に役立てる、クライエントとの情報共有に活用する、などクライエントに対してよりよい支援のために必要、また、援助者が交代しても支援の継続性や一貫性を保つため、他機関との情報共有のため、など援助機関の機能を高めるために不可欠、さらに、スーパービジョンや訓練のために活用する、調査研究に役立てる、などのためにも必要である、と学ぶ。

これに対し、木原さんは、援助者による記録を絶対視(承認)しないという、批判的な視点をもつことが援助者自身に必要であると、新しい視点の取り込みを提案している。批判的な視点を教えてくれるのが、福祉の領域における当事者自身の書く記録、つまり、自分史である。自分史は、パーソナル・ナラテイヴ・リコードであって、生活綴り方運動やふだん記運動が、歴史家の客観的歴史に対抗するものとして機能したように、自分史も援助者による記録(ドミナント・ストーリー)への「対抗文章」として位置づけることができる。

本稿では、自分史を援助実践に取り入れている、児童養護におけるライフストーリー作成の実践を紹介しているが、自分たちの生い立ちの記録をソーシャルワーカーや里親たちの支援を得ながら作るという欧米での試みの導入は、大いに関心をそそられる。
No42 東山紘久 『プロカウンセラーの聞く技術』創元社 2005

キーワード:カウンセリング、ロジャーズの心理療法


2000年に発行されて2005年には47刷、帯には「27万部突破!」とある。どれどれ、と読んでみて、フムフムと納得した。

聞き上手になる=相づち以外はしゃべらず、素直に(「でも」「しかし」などと言わない)、話に関心をもって聞く
『受容』とは、相手の話を肯定的にとらえること、相手の言ったことは相手のこととして(聞き手とは関係なく)認めるということ
避雷針になる=聞いた話と自分自身の気持ちを関係させない、聞いた話は忘れる
ただひたすら聞く、Listen するだけでAskしない
相手を理解するということは、人間の弱い部分、影の部分も認めること
プロはどうして来談者がその話をするのかに関心をもつ。だから、なぜ?ではなくその話を一生懸命に聞く

などなど、ロジャーズの来談者中心療法の極意が非常にわかりやすく説明されている。心理療法家と違って、ソーシャルワーカーは、支援を拒否する人の話も聞く必要がある。だが、なぜその関係を拒否するのだろう?と考えながら、相手とのコミュニケーションの糸口をみつけ(これはいろいろある)、聞き上手になって話しを一生懸命に聞く、そうしたところから関係を作っていくことはできるはず。そのためにも、聞くことのプロの技を学ぶことはためになる。

ただし、1時間くらい、じっくり時間をかけて話しを聞く、何度か聞く、そういう環境がソーシャルワーカーの実践現場では作りにくい。また、支援のためにAskも必要となる。ここらがまたむずかしい。

No33 野坂 達志 『統合失調症者とのつきあい方 ―― 臨床能力向上のための精神保健援助職マニュアルーー』 金剛出版 2004


キーワード:精神保健福祉士、統合失調症、システムズ・アプローチ、ソーシャルワーク、サイコセラピー

          

 以前、春日武彦さんの『援助者必携 初めての精神科』を紹介したことがある。この野坂さんの本も、精神保健福祉分野の精神保健福祉士さんはもちろん、子ども家庭福祉や高齢者福祉、生活保護、さらに、総合相談の現場で働く社会福祉士のソーシャルワーカーさんたちに、ぜひ読んでもらいたい。

家族療法におけるシステムズ・アプローチや、システム論の知識は、福祉の現場で苦労する家族関係を理解するうえで、とても重要だと私は思っている。だから、現役の「達人」精神保健ソーシャルワーカーである野坂さんが、システムズ・アプローチの知識や技法を大変わかりやすく、援助事例を豊富に紹介しながら解説してくれていることに感激。そして、地域精神保健活動を行うリーダーは、ソーシャルワークとサイコセラピーを統合した視点をもつことが不可欠、と主張していることに拍手。

統合失調症の人とのつきあい方の原則、面接のコツ、援助のコツ(これらは統合失調症の人との面接に限らない)も満載。最後には、援助職である読者(?)からの悩み相談にまで答えてくれている。言っている内容は本質をついていてするどいものが多いけれど、語り口はやわらかというか、親しみやすい。

この本によって、精神保健福祉士を目指す人が増え、元気をもらう精神保健福祉士が増えるはず。