Book+

福祉関連の本の紹介と、ちょっとした福祉にかんする話題を提供するコーナーです

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- --:-- | スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-) |
番外編 No10  黒田研二『高齢者虐待防止における評価体制の構築を目指して』


市町村の高齢者虐待防止担当セクションの職員さんにとって朗報です!

高齢者虐待ケースの基本台帳および厚生労働省報告用集計シート(エクセル版)と、その使い方・活用法をわかりやすく解説している報告書(CD付き)が刊行されました。

大阪府立大学の黒田先生による『高齢者虐待防止における評価体制の構築を目指して ――高齢者虐待「対応」から「防止」への取り組み~簡単ツールでがっちり情報管理~ ――』です。

虐待ケースの情報管理を行う「簡単ツール」と、全ケースについてモニタリングし評価を行う「レビュー台帳」が載っています。

高齢者虐待防止担当セクションの職員さんは、虐待事例の集計結果を毎年度厚生労働省に報告しなければなりませんね。でも、日常的にこうしたシートによって情報管理し、定期的にレビューしておけば、毎年度夏前にあわただしく集計するという作業をしなくてすむのではないでしょうか?

「簡単ツール」で得た統計情報を、事業報告や事業計画に活かすことも、「簡単ツール」でつくった資料をネットワーク会議や地域ケア会議で活用することもできます。

地域包括支援センターが民間委託で複数あるような自治体では、各地域包括の職員さんがその都度、この基本台帳に情報をインプットし、自分のエリアの虐待事例について管理するとともに、市町村にそれを送付する、市町村の担当部署は、これを定期的に集約して統括し、レビュー会議を責任をもって実施していく。

こうした活用の仕方をするならば、高齢者虐待防止の実務者間のネットワークがよりうまく機能していくと思われます。

サブタイトルに「市町村高齢者虐待対応評価ガイドブック」とあるように、このツールと解説文を活用すれば、自分たちの虐待防対応や防止活動を常時「評価」することができます。

スポンサーサイト
No82  荻原浩  『明日の記憶』  光文社  2007年

キーワード:若年性認知症、アルツハイマー

若年性認知症を扱った本書は、渡辺謙が主演して映画になった。それを見損なったので、書店に平積みにしてあった文庫本を読む。

クリスティーン ボーデンの『私は誰になっていくの?―アルツハイマー病者からみた世界』など、認知症の方が自ら病との戦いや対処のプロセスなどを表現するようになってきた。ブログで毎日の生活や思いを綴っている方もいる。テレビに出演したり、講演する方たちも出てきた。まだ偏見の強いわが国において、勇気ある行動だと思う。

本書は小説だけれども、認知症かもしれない、という強烈な不安に駆られる毎日、認知症と医師から告げられたときの衝撃、職場での必死のパッシングやメモの努力と非情な仕打ち、配偶者との気持ちのすれ違い、何かに賭けようとする強い焦り、、、、、どれも、ひどくリアリテイがある。

救いは、主人公の佐伯が職場を辞めた後、絶望して閉じこもることなく、趣味の陶芸を介して外に出ることだ。しかし現実には、もっと厳しい状況があるに違いない。

若年性認知症の方々に対する労働や作業を中心としたデイプログラム、こうした試みが地域の民間団体などを中心に登場してきている。若年性認知症の方とその家族を孤立させ、閉じこもらせない支援が、各地にできるといい。
No78 上野千鶴子『おひとりさまの老後』法研、2007年

キーワード;シングル、老後

うまいタイトルをつけるものだ。上野千鶴子がどういう人かほとんど知らない80歳の知人(女性)が、タイトルに惹かれ、買ったとのこと。彼女はめったに本を読まない人だから、ちょっとびっくりだ。
7月に発行して1ヶ月しないうちに7刷り。若きシングルも、中高年の1人暮らし老人予備軍も、そして、現役1人暮らし老人も、多世代の女性が、それぞれに不安を抱えているからなのだろう。

「病気になっても寝たきりになっても、その状態で生き続けられることこそ、文明の恩恵」上野さんは、以前からそのための「生き延びる思想」が必要と言っている。

現状では、高齢者を中心に「PPK思想」(ピンピンコロリが絶対に望ましい!)が根強いが、上野さんに言わせると、介護予防事業にもおなじくPPK思想がある。「筋肉トレーニングをするのは評判が悪く、結果はおもわしくなかったようだが、あたりまえだ。介護のない状態が『自立』で、保険はつかわなければ使わないほどよい、という考え方だ。政府がこんな考えかたをもっているところで、介護のされ方なんて思想が育つわけがない。」

「ケアの仕方についてのノウハウのあれこれはあるが、ケアのされかたを誰も教えてくれないのもへんなものだ」ということで、上野さんは「介護される側の心得10か条」なるものを提唱している。

これらについては、本当にその通り。ただ、扱われておらず、残念なことがある。
いま、現役の1人暮らし老人が一番不安になっているのは、「ボケ」「認知症」になることだ。MCI(軽度認知障害)、軽度認知症であっても、1人暮らしはある時期まではできるけれど、進行とともにむずかしくなる(進行を止める薬の開発まであと5,6年、あるいは10年はかかるとか。)

ある時期までの生活を支えるには、任意後見制度や地域福祉権利擁護事業をはじめとする福祉のサービスはもちろん、民生委員、福祉推進員といったボランティアや、近隣の人々の手助け、見守りが不可欠である。

そうした地域の信頼関係(ヒューマンキャピタル)をいかに構築するか、地域でのさまざまな取り組みを知りたい。
No63 天田城介 『 <老い衰えゆくこと>の社会学』 多賀出版 2003年

キーワード:老い、痴呆性老人、介護、家族介護者

高齢者虐待防止法が今年の4月から施行になったせいだろうか、最近、介護殺人や高齢者虐待の記事をよくみかける。周囲でも、要介護高齢者、特に、認知症のお年寄りのケアで苦労する人たちが増えてきた。

高齢者の家族介護は、家族成員間や親族間、近隣関係、ときには、職場関係などにも、いろいろな関係に影響を与える。それもよい影響は少なく、やっかいな影響が多い。それはなぜなのか?

大部な本書には、手が出しづらく、しばらく「つんどく」状態であった。このたび、家族介護者のインタビュー結果を分析して書かれた「第4章 在宅で追い衰えゆく身体を生きる家族を介護するということーー「痴呆性老人」と家族介護者の相互作用――」と、「5章 老い衰え行く高齢者夫婦の親密性の変容」を読んで、理解の助けになるところが少なくなかった。

本書は、「家族介護の脱自明化の時代における痴呆性老人の介護をめぐる家族介護者の意味づけ、解釈の変容過程をあきらかにしながら、相互作用のダイナミズムと家族介護者のアイデンティティ管理を、家族とジェンダーの視点から詳細に記述」した本である。

1960年代、70年代は、「日本型福祉社会論」によって、「『家』的家族観」にもとづく「嫁」の介護が当然という言説が振りまかれた。だが、その後、「愛情規範」にもとづく「娘」による介護が当然という言説が生まれ、90年代に入ると、個人主義イデオロギーが老夫婦間のケア、老老介護もやむなしとし、平等主義イデオロギーが息子による介護の現実も当然視するようになっていく。

こうした脱自明化の時代だからこそ、人々は、さまざまな言説の影響のもとで、介護のコンテキストを解釈し、自分の行為に納得できる意味づけをあたえようと努力する。その過程は、認知症高齢者や、他の家族成員、親族などによる解釈と行為とのぶつかりあいの過程である。そして、何が家族か、妻とは何か、娘とは何か、、、、を作り上げていく過程でもある。

家族介護者に直接接触するケアマネジャーさんやソーシャルワーカーさんにとって、本書の家族介護者へのインタビュー結果とその分析結果は自明のことだろうか?援助者が時間に追われてしまうと、家族介護のダイナミズムを深く理解したうえでの支援はなかなかむずかしい。
No58  近藤克則 『「医療費抑制の時代」を超えてーーイギリスの医療・福祉改革――』 医学書院 2004年
 
 キーワード:ソーシャルケア、政策評価、ケアマネジメント

サブタイトルにあるように、イギリスの医療政策やブレアのNHS改革について記述し、日本へのインプリケーションを示した本である。第3部の1章では、「イギリス・ブレア政権の高齢者介護・福祉政策」として、ニュー・パブリック・マネジメント(NPM)を紹介している。

NPMは、①サービス基準や数値目標の明示、②サービス提供の民営化・効率化、③政策評価の重視、を特徴とする。①は、サービスの質向上のために、どのようなサービスの質が高いかをスタンダードで示すとともに、到達目標を数値で表す、というものである。

③は、たとえば、50の指標から成る業績評価枠組(PAF: Performance Assessment Framework)を指定し、地方自治体の業績を総合的に評価する指標として活用することを求める。

また、ソーシャルケア(福祉サービス)の向上のために、ソーシャルケアに関する研究の知見を集積し、それにもとづいた実践ガイドや電子図書館を通じて普及を図るSCIE(Social Care Institute for Excellence)が2001年に創設されたとのことである。このサイトからソーシャルケア研究のデータベース(CareData)が利用できる。

近藤氏が指摘するように、日本は、介護保険によってサービス供給システムやサービス評価システムはかなり整ってきたが、PAFやSCIFといった取り組みは不十分だ。今後、このような政策評価の手法やデータベース化は急ピッチで行われるだろう。

こうした傾向と平行して、近年、日本のソーシャルワークにおいても、EBP(Evidence-Based Practice)が重視されつつある。EBPで行える範囲は、ソーシャルワークについては限定的だと思うけれども、政策評価とともに、実践の評価研究も必要だ。

2章「イギリスのケアマネジメント」では、日本の介護保険下のケアマネジメントと異なり、イギリスのそれが自治体によって実にバラバラである点を紹介している。チャリスたちの言う集中的なケアマネジメントが必要と言っているが、日本でも介護保険の前は、この集中的ケアマネジメント、つまり、複合的ニーズをもつ人々、長期にわたり複数のサービスを必要とする重度の要介護高齢者をターゲット化して、サービスを統合的に供給することがケアマネジメントである、という認識があった。

それが介護保険を実現するために、要介護高齢者すべてを対象とするものに政治的に広げられたのだ。日本の介護保険に似た制度を州ごとに導入するか否か、プロジェクトを実施して検討したオーストラリアでは(プロジェクトの結果、その制度を導入しない州が多かった)、ケアマネジメントは高齢者の場合も精神障がい者の場合も、ターゲテイングしている。

2006年度からの介護保険の改正(?)は、遅まきのターゲテイングの開始である。ケアサービスとケアマネジメントサービスを利用してきた大多数の軽度の要介護者にとっては、つらいところだ。セルフケアプラン(高齢者自身によるケアマネジメント)と、地域でのサービス資源づくりを、比較的元気なうちにみなで始めなければ。

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。